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【ごちうさ】夏コミで出したコピ本

【シャロの一日】
 ひとりえっちした明くる日の朝は、どうにも罪悪感で堪らない。

 お気に入りの陶器を眺め撫で擦っていると、全く飽きる事なく何時間も経っていた。なんて事は前からよくある。それはいい、自他共に認めるフェチだ。
 リゼ先輩にティーカップをプレゼントされてからはもっと重症になり、寝る前の一杯を淹れる時使うのは勿論、そのまま綺麗に洗ってベッドまで持っていく始末。
 滑らかなフォルムをそっと、確かめるように指を這わせ、なぞる。艶々した光沢や、月明かりにぼんやり浮かび上がる白さを眺めていると、いつの間にか。先輩の柔らかそうなほっぺや、水着姿の引き締まったお腹、いつも眺めているうなじ、耳。全部先輩の姿とダブって見え出し、頭の中は妄想で満たされて。
 どうにも居た堪れないような、じたばたと暴れたいような、むずむずする衝動に慌てて、カップをベッドから離れた場所に置いた後。
 きゅうっと胸が締め付けられる感覚を抑えようと、タオルケットを強く抱いた。
 そのうちに、利き手がそろそろと、自分のものではないようにおっかなびっくり肌を撫で始め。
『あっ、も、そこやっ、おなべ、が……せんぱ』『ーーばか。もう“リゼ”だろう?』

 恥ずかしい台詞禁止―!
 そして飛び起き、寝落ちしていた事に気付く。全くもう、朝から脳内桃色すぎ。
 こんなに浮ついてたら、また千夜辺りに見透かされてからかわれそうだ。
 まだぼーっとする頭で顔を洗っていると、『カンカンカンカン!』玄関から妙に甲高いノックの音。噂をすれば影か、と出迎えれば案の定千夜だった。何故かお玉にフライパンを持っている。相変わらずほとんどノリだけで生きている子だ。
「おはようシャロちゃん♪」
「うるさい……朝早すぎ」
勉強にバイトに家事と忙しい中、朝くらいはゆっくりさせて欲しい。勿論千夜だって家業と二足の草鞋な筈なんだけど。
 何がそんなに楽しいのか、いつもの大和撫子スマイル。ふわふわした笑顔で毒気が抜かれるし、私は寝起きスタイルで気が抜けてるし、向こうは対照的にぴしっと制服着こなしてるし。なんだかなー。
「そうそう、ココアちゃんから聞いたんだけどね。土曜日にラビットハウスさんでパン祭りをやるらしいの。一緒に行かない?」
「もう喫茶店じゃなくてパン屋さんじゃない……」
 あそこも大概ヘンな方向性へ迷走している。十中八九ココアのせいだろうけど。
「はっ、もしかして余ったパンの耳も貰えるんじゃ!?」
「寝ぼけて素が出てるわよ。……そんな所もほほえまーだけど」
「え?」
「んーん、なんにも」
 おかしな千夜。いつもか。
 だけど残念ながら、土曜は一日中バイトだ。行けそうにない、かな。
 ココア、性格はさておきパン作りの腕は確かだし。食べてみたかったけど……。

「フルール・ド・ラパン。ハーブのお店でーす、宜しくお願いしまーす」
 学校が終わり、あっという間にバイトの時間。
 今日の仕事は外でチラシ配り、という事で私は公園に来ていた。
 一区切りつき、さて次の一束をと長椅子に置いていた大元の籠を見やると、そこにはなんともふもふの悪魔が!
「そっ、そそそそこどきなさいよ……ど、どいっ」
 ほんっとにもーなんなのよこの街ってばあっちもこっちも兎居すぎでしょやだぁ……等と悲鳴を上げ半泣きになりつつ、てんぱっても優先順位は間違えない。
「どいてくださいお願いします!」
 私は即プライドを捨てて土下座していた。兎相手に。
「あの、シャロ? 何やってるんだ?」
 えっこの声はまさか……いやーっ、りぜせんぱい!?
「ん、またあれか。ほら、あっちに行きな」
 もふデビルとはまた違ったベクトルで即赤面即慌てる私を尻目に、先輩は至って冷静に兎をどかしてくれる。

「あ、ありがとうございました……その服で外に居るなんて珍しいですね」
 先輩はラビットハウスの制服だ。今日も可愛さと格好良さが同居している。
「ああ。ココアが企画した夏のパン祭り、チラシ配り担当に任命されてな」
差し出されたチラシには、食べ放題の文言。思わずくぅ、とお腹が鳴った。
「食べ放題、は魅力的なんですけど、その日はバイトなので……」
「そっか……残念だな」
(メロンパン、お腹いっぱい食べたかったなぁ)
 気を取り直して、先輩もチラシ配り再開。
 この間短期で一緒に仕事した時教わった笑顔を参考にするぞ、なんて嬉しい事を言ってくれる。
「フルール・ド・ラパンを宜しくお願いしまーす♪」
「あっ可愛……じゃなくて先輩、無意識にウチの宣伝になってます!」

 綺麗にオチがついた所で、しばらくすると見知った顔に声を掛けられた。
「あら。桐間さんと天々座先輩だわ」
「本当、面白い格好をなさっているわね」
 クラスメイトの女の子たちだ。別に嫌いではないんだけど、こう。お嬢様オーラに当てられて、普段は無意識でやっているお嬢様仕草を、こっちも意識的にレベル上げなくちゃ。となるので気を張って疲れるのだ。
 知り合いか? と目で問いかける先輩に、曖昧な笑みで応えて。
 ごきげんよう、と優雅に挨拶してくる二人へ、今バイト中で~と当たり障りない世間話でお茶を濁した。
「そうそう、桐間さんも今度開くお茶会にご一緒しない?」
「お菓子を持ち寄ったりしてね、きっと素敵よ。先輩も、もしよろしければ」
「え、ええ……またいつか」
 参ったなぁ。前から何かと誘ってくれるのは有り難いんだけど、流石にそろそろ言い訳のネタも尽きてくる。そんな時困っていた私を横目に、先輩がさらっと言う。
「それなら、クレープやケーキのレーションを持っていこう。サバゲーやりながら食べたらきっと楽しいぞ!」
 にこにこにこ。先輩の笑みに、たぶん裏はない。本気で私や、この純粋培養なお嬢様たちと、楽しくサバゲーするビジョンが見えている。
 鯖のゲームがあるのかしら、なんてきょとん顔でとんちんかんな事を呟く二人。私は苦笑しながら適当に取りなして、彼女たちと別れた。
「……お嬢様ばかりの中、先輩のそういう所すごく安心します」
「ん、何がだ?」
 不思議そうな先輩。なんだか私も楽しくなってくすりと笑う。ううん、なんでもありませんよと。
 たぶん、知り合いの中でも一番のお嬢様育ちが先輩なのに、本当。この人は。

 今日はついてるな、と得した気分で先輩とも別れ、チラシ配りに戻る。
 すると、チラシを受け取ってくれた中のオトナっぽい美人から声を掛けられた。
「あのぅ……」

「このお店は、何かいかがわしいお店なのでしょうか?」
「えっいや、普通の健全な喫茶店です!」
 なに顔赤らめながらおずおず訊いてきてるのよ、こっちもなんか恥ずかしいじゃない!
 確かに制服はちょっぴりえっちぃ感じだけど、健全だもん。自分に言い聞かせてなんかないし!
 そう、不健全っていうのは例えばリゼ先輩みたいなスタイル良い人が着こなした時の……あっ凹むやめよ。 
「なるほどー。耳を付けた少女たちを拝みながらお茶をする……こういった趣向もあるんですね」
「拝む、っていうか……うーん」
 大真面目に何を感心してるんだ。そんな大袈裟なものでもないし。
「近日伺いますので、何卒よしなに」
「ちょっ、太ももに向かって話さないでください!?」
 なんなんだろうこの人。男性客からの視線は多少慣れたと思ってたけどまさか、ご同類? なんて言い方もヘンだけど。
 でもあまりに雰囲気がぽやぽやしすぎて性的な色というよりは……。
 と、とにかく、私はリゼ先輩一筋だもん!

 またしばらくして。
 ラビットハウスのチラシにスペルミスがあったらしく、配布を一旦中止。だけで済めば良かったんだけど、風に舞ってチラシがほとんど飛んでいってしまい、私も回収を少し手伝う事に。
すると、木の根元でしゃがみ込んで拾い集めていた先輩の頭へ、ぽとりと。虫が落ちる。
「ーッ!?」
 悶絶する先輩を見て逆に冷静となった私は、普通にそれを払い落としてあげた。
「意外な一面ですね。先輩にも苦手なものがあったなんて」
「お、お前も結構逞しいんだな……」
「家の隙間からよく入ってくるので慣、いやなんでもないです」
 ふふ、これじゃあさっきと逆になっちゃった。なぁんて先輩の可愛い弱点へ密かにニヤついていたらぺろんて妙な感かくぅSAGI!?

「兎が足をぺろぺろしてます」
 チノちゃん言ってないで助けて!
「シャロもやっぱ兎は駄目なんだなぁ」
 先輩もしみじみ言ってないで!
「ぴゃーーーーーーー!!」
 もーーーーいーーーーーーやーーーーーーーー!

 それがどうしてこんな事になるのよぅ……。
 あの後何故か、小さな兎を持ってみるよう勧めてくるココア。
 それを前にして、途方に暮れる私。チラシ集めろよ、と先輩。
 これだけ兎が苦手な様子を見せまくってるのに克服出来るようしつこいこの子、ぶっちゃけ性格わ……いや、見たらわかる。わかっちゃう。悪気、ゼロだ。余計に困るんだけど。
「このちっちゃい子なら大丈夫でしょ? 千夜ちゃんのあんこだと思って」
「か、噛まないなら……」
 手の中の、小さくて暖かくてふにふにの白饅頭。
 じっ、と目が合う。い、一体どうしたら。
「――き、きゅうきゅう」
 兎ではない。私の鳴き真似だ。
 途端、空気を読まないココアと、チノちゃんのツッコミが入る。
「えっ、兎って鳴くの!?」
「いえ、そんなにはっきりとは鳴かないかと」
 そんな、だって、子供の頃千夜から聞いた話では……あいつめぇ、帰ったら問い詰めるっ!

 そして翌日。ラビットハウスのパン祭りが開催した日だ。私は勿論バイト。
 夜。夕飯を買い忘れた私がふらっと外に出ると、……千夜と、ラビットハウスの面々が、軒先で立ち話していて。
 これって、マズい、よね? サーッと、血の気が引いた。

 ――結局、今更言い訳のしようもなく。嘘の上塗りもいい加減疲れてたし。
 めちゃくちゃ気遣ってくれるリゼ先輩とチノちゃんを見てつらくなったり、全くブレないKYのココアに敗北感覚えたりした後、私はみんなに秘密をぶっちゃけたのだった。
 それにしても、先輩もお人形とか好きなんだぁ……えへ。可愛いな。

「なぁに? さっきまで恥ずかしさにごろんごろん身悶えしてたかと思えば、急ににこにこしちゃって」
「なんでも、ないし……」
「でも、これでわかったでしょ? シャロちゃんがお嬢様じゃなかったとしても、みんな幻滅したりしないわ」
「千夜……」
 みんなが帰った後。お裾分けに頂いたパンを、折角だし食べようかという事で。千夜と二人、お茶する流れになっていた。
「けど、二人だけの秘密がバレちゃってちょっと残念」
「なんでそうなるのよ」
「ふふっ。さ、頂いたパン食べましょ?」
「こら、私のティーカップコレクション勝手に使わないでよぅ。て、あっ。メロンパンがいっぱい入ってる♪」
「良かったわね、シャロちゃん」
 先輩……ひょっとして、ちょっと呟いただけのあの一言、覚えていてくれたのかな。だとしたら嬉しいな。
 夜は更けていく。なんだかいつもより、優しい時間だった。



【千夜の回想】
 私の幼馴染にして、一番のお友達。シャロちゃんを紹介します。
 お家が隣だということもあって、親御さんにも良くして頂き、昔からいつも二人、一緒に遊んだりしてきました。
 だからシャロちゃんの事は、大抵なんでも知っています。
 彼女は凄く素直で、努力家で、真面目でちょっぴり見栄っ張り。からかい甲斐もあって、優しくて。
 私は彼女の事が大好きなんですけど、一つだけ。気がかりがありました。
 
これは、私が積極的に首を突っ込んで集めた情報ではなく、付き合っていくうち自然とわかってしまったお話です。
 シャロちゃんは、自分が『貧乏』――なんて言い方したくはないんですけど――家庭の経済状況をずっとコンプレックスに思っていました。
 桐間家のご両親は、とても仲睦まじく、外見も王子様とお姫様のように美男美女の鴛鴦夫婦だったんですけどただ……お金を貯めることが致命的に下手でした。
 お父様の方は大変なプレイボーイで、昔から大層おモテになったらしく、所謂女遊び、なんて言い方もやだ、失礼かしら……。派手に浮名を流していたそうです。
 シャロちゃんが生まれてからは見違える程に大人しくなったものの、やはり女性へ誰かれ構わず優しくするのは根本的な性分、治らなかったそうで。ご自身は優秀な営業マンとして立派に日々稼いでいるのですが……女性へ優しくすること=金銭的負担を男が一手に引き受けるものという認識がどうしても強固な為、交友範囲の女性には手当たり次第、こう、しゃぶり尽くす勢いで食い物にされている、と。
 ……こほん。
 お母様も同じく。さっき言った通りにキラキラと輝くような美貌の方で、家柄も正真正銘のお嬢様。お父様と交際から結婚に至るまでは聞いている方が恥ずかしくなるようなロマンスがあったそうなのですが、それはさておき。
 服飾に、ものすっっっっごくお金を掛ける方だったのです。
 シャロちゃんが生まれてからは共働きで、モデルとして活躍されているのですが、仕事上の必要性を軽く飛び越す程の金額を、ご自身のファッションへ費やすことはどうしてもやめられず。
 結果、家計は火の車。二親共に家事はてんで駄目だった為シャロちゃんが自然と一手に引き受けることとなり、更にご両親たっての希望で私立のお嬢様高校へ進学を決める事となったんです。
 肉体的、時間的、心理的負担。私は心配でなりませんでした。
 根は本当に庶民派だし、金銭ほかの感覚もまた同じく。そんな彼女が、温室育ちのお嬢様たちと果たして上手くやっていけるのだろうか、と。
 私の心配を他所に、シャロちゃんは本当に頑張っていたんです。
 毎日毎日、特待生枠の為勉強へ精を出し。校風にもすんなり馴染めるよう、所謂お嬢様仕草までこっそり練習して身につけて。高校へ入学してからはすぐにバイトも始めて家計の一助にしていました。
気品のある立ち居振る舞いは、シャロちゃんの可愛らしい容姿へぴったりマッチしていたんですが……まさか無意識レベルにまで染み付いて、そうしていなければいけない、強迫観念めいたストレスになるとまでは、流石に思ってもいなかったんですけど。

 金銭面ではダメダメながらも、シャロちゃんへの愛情というただ一点においては全く問題のないご両親でしたから、お二人も共働きで愛娘を寂しがらせている事を大層気にされて、一番親しかった仲の私へ『シャロのことを宜しく頼むね』と。

 ……私は、贅沢は出来なくても経済的に苦労した事はありませんし、家族からの愛情に物足りなさを感じた事もありません。
 だから、シャロちゃんのしてきた苦労をわかる、わかってあげられるなんて事は軽々しく言えません。だけど。
 だけどどうして、贅沢するお金の為には時間を使えるのに、大切な家族との時間を削る選択肢が選べるのか、私にはわかりません。理解できません。
 そう、はっきりとシャロちゃんのご両親へ食って掛かった事もありましたが……お恥ずかしい話です。自分が何も知らない小娘でしかなかった事を、思い知らされるだけに終わりました。

 ともあれその後は現在に至るまで、彼女とは普通に仲良く友達付き合いをしつつ、その努力をずっと見守ってきました。
 人生何が起こるかなんて本当、わからないものですよね。新しいお友達、ココアちゃんと仲良くなった結果、廻り廻ってシャロちゃんのお嬢様仕草に関する秘密を堂々と明かす事が出来たんですから。
 憧れのリゼ先輩との交流もなにやら進展があったようですし、これで少しは肩の荷が降りたわと清々した顔をしています。でも。
 この小さくて金色でふわふわの、兎が苦手な子兎ちゃんを、まだもう少しだけ、独り占めしている時間は、私だけのものにさせてください。
「けど、二人だけの秘密がバレちゃってちょっと残念」
「なんでそうなるのよ」
「ふふっ。さ、頂いたパン食べましょ?」
「こら、私のティーカップコレクション勝手に使わないでよぅ。て、あっ。メロンパンがいっぱい入ってる♪」
「良かったわね、シャロちゃん」

 翌日になり、上手く言いくるめて珈琲を飲ませたシャロちゃんをラビットハウスへ連れて行き。また楽しく一騒動あったお話は、別の機会にしますね。
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